感想文            お稽古
初めてのダンスイベント   キム・イヨン English


 先日、私は国際ダンスフェスティバルというイベントに参加しました。
このイベントは、世界各国のダンサーが自国の伝統舞踊を披露し、ダンスを通じて国際交流を深めようという趣旨で、
新宿区が年に一度主催するものです。
このような大々的なダンスイベントに参加することは私にとって初めての経験で、とても緊張しましたが、世界各国の様々な踊りや、
民族衣装を一度に見ることができたことは、ダンスを学ぶものとしてとても貴重な経験となりました。
 イベント当日、会場でみんなが準備に追われる中、どうしても観たかった演目がありました。
それは、私の祖国である韓国の伝統舞踊です。
大ホールでの公演には残念ながら間に合わなかったので、準備が一段落した頃合をみて、足早に、
ワークショップが行われる小ホールへと向かいました。
休憩後、最初のステージということもあり、観客はまばらでしたが、何人かのお客さんがすでに舞台上にいました。
そうすると間もなく、舞踊団の代表と思われる女性が、「どうぞよかったらいっしょに踊ってみませんか」と、
とても流暢な日本語でお声をかけてくださいました。
私は急な呼びかけにたじろぎながらも、わくわくした気持ちでスニーカーを脱いで、そそくさとステージへ上がりました。
そして、チマチョゴリを着た舞踊団の方たちと、何人かのお客さんとで円になって、韓国舞踊の基礎的なフォームや
簡単な振り付けを教わりました。
「ハナ、トゥル、セ、ネ、タソッ、ヨソッ、イルゴッ、ヨドル」と、8カウントの曲に合わせて小さい円になったり、
大きい円になったり、くるくる回ったり、なんだかキャンプファイヤーのマイムマイムのようでとても楽しかったです。
韓国の踊りで私が特徴的だと感じたのは、足の出し方です。
普段、私が教わっているバレエやジャズでは、ポイントという足の甲を伸ばした状態で、つま先から踏み出すことが多いのですが、
そのようにしていると、「足はかかとから先につけてください」と教えてくださいました。
韓国舞踊では、足首を曲げ、つま先を起こしたフレックスの状態からかかとを先につけるのが基本となっているようなのです。
国が違えばこうも違うのかと、自国の踊りに軽いカルチャーショックを受けましたが、後になって、すり足こそしないものの、
つま先を伸ばさない点は日本舞踊に共通していると思いました。
このようにして、最後は一曲通してみんなで踊り、ほんの20分程度の短い時間でしたが、私にとっては初めての韓国舞踊体験で
、本当に感慨深いものがありました。
 そうこうしているうちに、イベントも終盤に差し掛かり、いよいよ本番を迎えました。
私たち東京演舞隊は日本代表として、南京玉すだれと、侍と芸者の日本舞踊を。
そして、ブラジル代表として、(ブラジル人は一人もいないのだけれど)サンバを披露しました。
正直あまりの緊張と興奮で、舞台上のことは断片的にしか思い出せないのだけれど、はっきりと記憶されていることがあります。
それは、南京玉すだれのクライマックスでのこと、しだれ柳を作って二手に別れ、舞台上を回る場面で、
「イヨンちゃん回って!」という声が聞こえてきました。それもあちこちから。
2回回らなければいけないところを、1回でやめてしまっていたのです。
そして最後の見せ場、舞台上に横一列に並ぶ場面では、先頭だった私に再び、「イヨンちゃん止まって!」と別の声が。
こんなわけで、私は初舞台を無事終えることができました。
今考えると、あの「声」がなければ、みんなの助けがなければ、残念な結果に終わっていたかもしれません。
チームワークのすばらしさ、そして周りのみんなに感謝の気持ちをひしひしと感じた初舞台でした。
そんな玉すだれに続いて、「川の流れのように」で踊った日本舞踊では、若干ですが気持ちに余裕も出てきて、
硬さもとれ、なかなかの滑り出しでした。
しかし、曲が進むにつれ、衣装がだんだんと崩れていき、後半の総踊りの頃には、胸の下の袴は腰へ、
裃は片側がずり落ちなんとも情けない侍姿になっていました。
落ち込む暇もなく、脱げかけた着物を脱ぎ捨て、大きな羽飾りを背負い、最後の演目サンバへ。
登場するや否や、客席から沸いた歓声に、一気にボルテージが上がりました。
ここまでの失敗は忘れて楽しんでやれと、慣れないヒールでのダンス、肩に背負った羽飾りと格闘しながらも、
最後はセンターでポーズをとり、隣の人と羽をからませたまま舞台袖へとはけていきました。
振り付けは忘れるし、反対のほうに進んだりと、メチャクチャだったけど、とにかく楽しかったの一言です。
反省点は山のようにあるけど、何もかも初めてだったこの舞台、不安と興奮を感じながら、毎日練習して、
衣装を作って、みんなで協力し合って生み出されたこの一瞬の時は、何にも換えがたい価値があると感じました。
 本番を終え、着替えを済ませて、他の国のステージを観に客席へ向かいました。
イベントも終わりに近づき、残るステージはアルゼンチンとタイの二カ国となっていました。
アルゼンチンは、小気味良いタンゴの音楽に合わせ、目の覚めるようなペアダンスで魅せてくれました。
かたやタイのほうは、とてもゆっくりとしたテンポで、なんとも不思議な音楽に乗せて、舞う姿に思わず
心地よい眠りに誘われてしまいました。
それにしても、日本にいながら、今まで知らなかったような他国の伝統舞踊を観る機会に恵まれ、
私はとてもラッキーだと思いました。
それと同時に、異国にいながら、祖国の文化をこのような形でみせてくれる踊り子の方に感動し、
これは私も見習うべきだと思いました。
この日は、やりきったという充足感と、緊張から急に開放された脱力感で、ウトウトしながら家路につきまいた。
 終わってみれば、まるで走馬灯のように過ぎ去っていった一日でしたが、後日、こっそり観に来てくれていた
友達(今のカレシです?)から、「素晴らしかった!」と感想を聞いたときは本当に嬉しかったです。
今は11月のイベントに向けて、準備を進めています。
今回はダンスに加え、歌も披露するので正直不安も大きいですが、新たなチャンスを与えられたことに感謝し、
日々練習に励んでいます。
ダンスを通して、広がっていく世界、人間関係、変化する自分…
そんな毎日が、今までになく有意義で楽しいです。
もっと良いものを、もっとたくさんの人と共有できるように、今日よりも明日よりもステップアップして
新たな舞台に臨み続けたいと思います。
 
施設でのダンス・イベント
 
 先日、私は障害者福祉施設で行われた、慰問公演に参加しました。
この施設は、知的障害者の方が通所、または入所し、自立して、少しの支援で地域での生活ができるように、
生活支援や作業支援を行っているところです。
私たちは、この施設で年に一回開かれているチャリティーイベントで、世界各国の踊りを披露しました。
その日は、朝から夕方まで、3組の団体がダンスやマジックを披露し、私たち東京演舞隊は昼食をはさみ、
前半と後半の2ステージを上演しました。
 今回の私たちのコンセプトは、「踊りで世界旅行に出かけよう!」です。
これは、普段遠出する機会の少ない施設の方々に、世界中の踊りを披露して、旅行気分を味わってもらおうという趣旨で
企画されたものです。
なにせ世界旅行ですから、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど衣装や小道具の都合がつくものはどんどんやろうと、
1時間弱の上演時間で10カ国もの踊りを披露することになりました。
演目にすると合計13演目にのぼり、ちなみに私はそのうちの9演目に参加する事態となりました。
(信じられない)
これは、大変です。
なぜそうなったかというと、この日が平日で、参加できる人が限られていたため、同じ人が何演目も出演するという苦肉の策でした。
それは、何通りもの振り付けを覚えなければならない大変さはもちろんのこと、着替えや段取りを如何に
スムーズにこなすかということが課題となってきます。
 このようなチャレンジ性の大きな公演を控え、できる限りのことをして臨もうと、衣装や小道具の調達、楽曲の編集、
フォーメーションの作成など自分なりにやってみました。
初めてのことばかりでしたが、出演者としてだけでなく、作り手の作業に多少なりとも関われたことで責任感が生まれ
、また今後のイベントにおいても大きな糧となったことは言うまでもありません。
そして、何よりも有意義だったことは、私自身これが2度目のパフォーマンスとなる素人ながら、
プロのダンサーの方たちと多くの演目に参加させていただいたことです。
ダンスを始めてからわずか3ヶ月足らずで、このような機会に恵まれるとは想像もしてませんでした。
力不足な私に多くのチャンスを与えてくださり、あらゆる面で手取り足取りサポートした下さった先生方、
また参加者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
 今回、私にとって最も大きな試みは、祖国である韓国の民謡アリランを上演したことでした。
前回の国際ダンスフェスティバルでの韓国舞踊団によるワークショップに参加し、初めて韓国舞踊を体験した私に、
今度は自ら祖国の伝統芸能を披露してみないかという、先生のご提案でした。
そこで、韓国の代表的な古謡であるアリランを私が歌い、何人かの方に協力を得て、扇子を使った踊り
(ブチェチュム)を披露することになったのですが、公演日が平日ということもあり、なかなかスケジュールの
都合がつく方が見つからず、時間だけが過ぎていきました。
そんな私を見かねた先生が、一緒に参加することになっていたほかの先生に掛け合ってくださり、ありがたいことに、
そちらの生徒さんお2人にご協力いただく運びとなりました。
これでなんとか上演できる!よかった!と思い、一安心したのも束の間、ギリギリのキャスティングだったため、
それぞれのスケジュールを合わせることが難しく、一度もリハーサルをすることなく本番を迎えてしまいました。
本番当日、お2人に実家の母から送ってもらったチマチョゴリを着ていただき、扇子を持ってこんな風に踊って…と、
ほとんど口頭だけで打ち合わせをし、舞台に臨んだのです。
しかし後になって、撮影された映像を見てみると、驚くことに私の後ろで踊っているお2人が、
まるで何度もリハーサルを重ねてきたかのごとく、息もぴったり踊っているではありませんか!
私のほうも、なんとなく歌詞に合わせてつけた手の振りが良かったのか、口パクだった歌が実際に歌っているように見えなくもなく
、直前に打ち合わせたとは、とても思えないような出来に仕上がっていました。
これも、無茶な要望を嫌な顔一つせず、それどころかチマチョゴリが着れて嬉しいと喜んで、引き受けてくださったお2人のお陰です。
この方たちの、寛大さ、パフォーマーとしてのメンタル、スキル、チームワークに只々胸を打たれたアリランでした。
 この公演を通して一番印象的だったのは、観覧者の方々の反応です。
福祉施設でのイベントということで、施設の利用者の方はもちろん、そのご家族やご友人、そこに従事しておられる方々など
、大勢の方が観に来て下さっていました。
その中でも、観覧席の前列のほうに座っていた障害者の方々は、私たちが色とりどりのショールを羽織って出てくる場面や、
お侍と芸者が交互に並び、もみじの枝を揺らす場面で、
「わぁ、キレィ!」
「すごーい!」
と、いっせいに声を上げて、手をたたき、目を輝かせていました。
私は、そんな彼らの素直で正直な反応に驚き、「あぁ、やってよかった!」と喜びを感じずにはいられませんでした。
彼らから、この公演の感想を聞かずとも、その反応こそが全てを表していて、演者である私たちに、
何よりも大きな励みを与えてくれたことは事実に他なりません。
ここまで率直で、瞬間的な反応というのは、健常者の私たちにはなかなか出し得ないものです。
もちろん、良い反応ばかりではないわけで、今回、様々な衣装を使って、短い演目を数多くやり、
バンブーダンスやサンバなどで、観覧者も一緒になって楽しめる構成にしたことは、大変ではありましたが、
結果として大正解でした。
 途中、手違いで順番とは違う曲が流れてしまったり、着替えが間に合わず、しばらくステージを中断した場面もありましたが、
そこは先生、「当機はアメリカから急遽、韓国はソウルに向かいます。シートベルトをお締めくださいませ。」と
、素晴らしいアドリブで場をつなぎ、雑学や小話なども交えながら、どこまでも観客を飽きさせない名MCっぷりでした。
 今回、本番中に起きたある出来事がきっかけで、学んだことがあります。
私にとって初舞台だった前回の公演でも上演した、玉すだれでそれは起きました。
前回の公演で、私は2手に分かれてステージ上を回る場面で、2周しなければいけないところを
、1周でやめてしまうミスをしてしまったのですが、みんなの呼びかけにより、なんとか場を持ち直した一幕がありました。
そして今回、またもや同じことが起こりました。
私の前を歩いていた人が、一週回った時点で止まってしまったのです。
その瞬間、脳裏に前回の舞台での出来事が一気に蘇り、私は慌てて、「もう一周です!」と小声で叫びました。
すると、それを聞いた彼女はすぐには動き出さずに、様子を少し伺って、「止まっておきます。」と言ったのです。
それには訳がありました。
今回のステージは、前回の新宿文化センターのものよりもずっと小さく、舞台上を1周するのに要する時間が短くなっていました。
つまり私が声をかけた時点ですでに、もう一方の下手側のグループは2周し終えようとしていたのです。
彼女は動揺することなく、冷静にそれを確認したうえで、タイミングを合わせるために、「止まっておく」という判断をしたのです。
あの状況下で私が彼女の立場だったら、慌てて動き出し、かえって悪い結果を生んでいたかもしれません。
さすが、経験をつんだプロは違うと思いました。
そして舞台は練習通りに踊ることよりも、観る側にとってどうなのかということが、何より大切なのだと気付かされました。
舞台上が自己満足の場であってはならない。
成功かどうかは観る人が判断すること。
ときに、決められた通りにやることが、成功だとは限らないのだということを学びました。
 公演が終わり数日が経って、舞台の模様が撮影された
DVDや写真を見ました。
本番中はあまりの慌しさに、他の出演者のステージを観ることがほとんどできなかったので、
このようなかたちで記録として残してくださったことは、大変ありがたく、嬉しい限りです。
達成感と思い出に浸りながら、観る側の視点でステージを楽しむ傍ら、自分の課題も見えてきました。
全編を通して目に付いたのは、私の自信なさげな表情や動きです。
経験豊かな他の方たちと同じ舞台にいると、その様子がなおさら目立つのです。
それに比べて、プロの方たちのなんと素敵なことか!
皆さんお忙しく、充分に練習する時間も取れなかったと思います。
にもかかわらず、そんなことは微塵も感じさせない態度で、堂々と演じきっていました。
そういう姿勢こそ、私が1番身につけなければならないものだと思いました。
自信に満ちた姿で演じてこそ、感動を与えられる。
それができるパフォーマーでありたいと思います。
 今回の経験は、未熟な私にとってあまりにも大きく、完全にキャパシティを超えていて、
ここには書きつくせないほどの学びや気付きや感動がありました。
おそらく、普段あまり馴染みのない福祉施設での公演や、これだけ多くの演目を一度に披露したことは、
すべての参加者にとって大きなチャレンジだったと思います。
そのため、準備不足や予期しない出来事、至らない点など多々あったと思います。
私自身も上げればキリがないほどたくさん失敗しましたが、それ以上に多くのもの得た公演でした。
大きく一歩前進したことを実感できた今回の公演、これからが遠い道のり歩みを止めず、まい進し続けたいと思います。